深海2017@国立科学博物館

タコ学

「深海 DEEP  OCEAN〜最深研究でせまる”生命”と”地球”〜」

会期:2017年7月11火(日)〜10月1日(日)
午前9時〜午後5時(金・土は午後8時まで。入館は各閉館時間の30分前まで)

会場:国立科学博物館(東京・上野)

 

ここ国立科学博物館では、2013 年夏にも「深海展」が開催されました。その際、ダイオウイカのスクープ映像および巨大標本展示が話題となり、ダイオウイカブームが起こりましたね。

今回も生物だけでなく、生命の起源や巨大災害との関係性、資源など、多方面から「深海」にアプローチしています。

館内では映像や標本、資料のほか、それらを探査、採取、撮影するために必要な機材なども数多く展示され、研究への理解を広める目的にもなっているように思いました。

そんな今回の「深海展」の中から、タコ関連を中心に、印象に残った展示をご紹介します。

(通常は呼称として定着しているタコの「脚」に関して、この記事の中では、タコの「腕」という表記で統一します)

🐙発光生物関連

会場の天井部一面に広がる大画面で、発光生物が泳ぐ場面が映し出されています。

 

こちらが、私のお目当て。

コウモリダコ

 

スクリーンに映し出される生き生きした姿は、とても大きく見えるのですが、実物の標本はこんな感じ。

 

意外に小さい。

でも、ちゃんとミミの部分が見えますな。

 

横から見たところ。

腕の触毛が見えます。

 

 

そして、何げに人気のこちらも。

デメニギス

 

こちらも泳いでいる姿は、とても神秘的なのですが、標本になると

 

言われてみないと、これがデメニギスというヒントがありませんね。ただ目が大きな魚のようです。

 

 

🐙南極の深海関連

南極の深海という、ダブルの特殊環境における生物が紹介されていました。その中に、タコを発見!

その名も「ナンキョクオオイチレツダコ」の仲間。

タコの多くは二列ある腕の吸盤が一列しかありません。今回の展示のために研究者の方が修復作業を施したそうです。

 

 

 

 

頭の部分。

通常のマダコのようです。

 

しかし、腕の部分を見ると

 

確かに、吸盤が一列しかありませんな。

 

生息域の便宜上、吸盤が二列はいらないということなのでしょうか。

詳しい解説はなかったので、継続調査中です。

 

 

そしてこちらは、ダイオウホウズキイカ

ダイオウイカより小さくて重い、ズングリムックリ体型なのですね。

しかし、このイラストを見ると、全身のデフォルメ感がアニメのキャラクターのようです。

 

 

 

 

 

 

 

🐙巨大生物関連

深海域は広く深く、調査が届きにくいため、未だどのような巨大生物が潜んでいるか謎の部分が多いですね。

こちらはミツクリザメ。

平均全長 約5.5m

捕食する際、顔が中から飛び出してくるような醜い表情が有名で、ゴブリンシャークとも呼ばれています。

 

 

 

 

後ろ:ダイオウイカ模型
前:オンデンザメ

オンデンザメ標本は全長約7m。今回の巨大生物ゾーンの目玉となっています。

 

 

 

 

こちらが前回の目玉ダイオウイカの標本。縦置き。

横に比較するためのスルメイカの標本がありました。

 

 

 

🐙生命起源関連

生命の起源には諸説ありますが、ここでイチオシなのが「深海熱水起源説」でした。

深海底にある熱水噴出孔で生命が誕生したとする仮説です。

地質記録から、約38億年前から現在に至るまで、海底熱水活動は継続中。さらに、原始生命が必要とする水素や硫化水素などのエネルギー源を、この熱水噴出孔から継続的に得られることからも、有力視されている説だそうです。

イメージとしては、こんな感じとな。

 

 

🐙超深海関連

魚が棲める限界水深はやく8400mとされています。水深8000mを超えると水圧により体内のたんぱく質が壊れてしまうからだそうです。そのため、それ以上の水深には魚以外、エビ類などの生物しか発見されないのです。

そんな限界水域から採取された生き物がこちら。

 

マリアナスネイルフィッシュ

魚類の生息深度限界ギリギリで採取されたのですね。

 

ダイダラボッチ

こちらは魚類ではなくエビ系なので、もうちょい深部でもイケそうなのですね。

 

 

 

🐙撮影、採取、調査機材関連

 

フルデプスミニランダー

1万m超えの海底でも観測、撮影が行えるよう、浮力材やガラス球などには、高圧に耐えうる特殊品が使用されているそうです。

 

撮影カメラは、その特殊球体で守られているのですね。

 

 

無人深海探査機 江戸っ子1号

東京都と千葉県の町工場が中心となり開発。2013年、世界初、日本海溝の水深約7800m付近にて、ハイビジョンカメラで生物の撮影に成功。

 

 

 

 

しんかい6500

 

 

🐙巨大災害、資源関連ゾーン

展示の後半は、2011年東日本大震災以降の調査結果を反映させたものが多くなっています。

深海底が震源となる地震に関する解説、海底調査による海底資源の可能性などなど。

 

 

地球深部探査船 “ちきゅう”

 

 

こちらは世界初公開。東北地方太平洋沖地震の地震断層。

上がレプリカ。下が実物。

探査船「ちきゅう」から深海底まで(ほぼ富士山二つ分の距離)パイプをつなげて採取してきます。

 

 

こちらがレプリカ。

 

こちらが実物。世界初公開!

 

 

 

 

これは海洋資源として期待されるものの一つ、マンガンノジュール。日本にとって、将来的に救世主となるかもしれない鉱物資源です。

 

 

有人潜水調査船「しんかい6500」

 

 

 

🐙しょこたん画伯コーナー

「しょこたん」ことタレント中川翔子さんは深海愛が深く、2009年には「しんかい6500」に乗船して水深5300mまで潜り話題となりました。

今回の「深海展」では音声ガイドを担当し、さらに、こんな自筆の絵も展示されていました。

絵もキャプションも、しょこたんワールド炸裂!

 

”深海のスター性、カリスマ性を供えたデメニギス様”

 

 

”口の中に鼻があったり、肛門付近までシッポを自切したり、生態も不思議なリュウグウノツカイ”

 

 

”深海軟体シリーズ。一目惚れしたコンドロクラディアリラを真ん中に”

 

 

”深海クラゲや透明シリーズ。ギガントキプリスアガッシィは、目が大きいかわいいヤツです”

 

 

”深海ザメとダイオウグソクムシたち。深海ザメの虚無感溢れるなんともいえない目がたまらなくゾクゾクします”

 

 

というわけで。いやはや、予想以上盛りだくさんで、あっという間に2時間ほど滞在していました。

海洋研究の可能性も体感でき、また次回の展示が楽しみです。

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