「流行蛸のあそび」@歌川国芳

タコグッズ、アート
商品:ICカードケース

発見日:2020年5月下旬

発見場所:オンラインショッピングサイト

素材:ABS 樹脂(プラスチック)、ボールチェーンストラップ

サイズ:H 約10㎝、 W 約6㎝、D 約0.5㎝

販売元:おもしろ雑貨専門店e-scoop Shop

オンラインショップで発見し即買いしました。ICカードケースです。

プラスチック製で、片面にタコ浮世絵がプリントされています。

さてこの元絵は、江戸時代末期の浮世絵師、歌川国芳作「流行 蛸のあそび」です。(下の画像は、A4版レプリカポスターより)

制作時期は江戸、天保時代後期。版元は、藤岡屋彦太郎。浮世絵の本物は大英博物館に所蔵されています。

当時庶民の間で流行っていた遊びが、タコを擬人化してユーモラスに表現されています。ここに描かれているのは5つのシーン。ひとつづつ見てみましょう。各々の絵に江戸時代の変体仮名で解説が添えてあるのも面白いですね。

その1.軽業師

この見世物の一団。細い紐の上で曲芸を披露するタコ、太鼓や笛を使って音を鳴らすお囃子担当のタコ、扇子を持って口上を述べるタコ。皆真剣です。各々の絵の横に「かるわざ」「口上」「おはやし」と文字が入っています。軽業師のバランスの取り方が絶妙ですね。

その2 .チャンバラごっこ

左側の大ダコとは対照的な左側の小ぶりなタコ。その足元に「うしわか」の文字が見えます。ということは大ダコは弁慶、小ぶりなタコは牛若丸(後の義経)。有名な「五条大橋」の出会いの場面を演じているのでしょう。弁慶の大鉈が大きな葉っぱというのも面白い。表情も迫力満点。

その3.飴売り

ただの飴の行商ではありません。当時大流行した「おまん(お万)が飴」です。元は四谷に住む屋根職人の男性が副業として始めたそうですが、その売り方が独特。男性が女装して踊りながら、女性の声色で艶っぽく売り歩いたところ大ウケに。「かわいけりゃこそ神田からかよふ、にくて神田からかよわりょか、おまんが飴じゃに、一丁が四文じゃ」という呼び込み芸と共に繁盛したそうです。青紙を張った籠に飴を詰めて商いしている様子も実際の飴売りに忠実に描かれています。

この「おまんが飴」は市中の大流行から広がり、芸者がお座敷で披露したり、歌舞伎役者、四代目中村歌右衛門が浄瑠璃演目『花翫暦色所八景』(はなごよみ いろの しょわけ)内でお万を演じ、さらに流行が広がったとされています。

その4.すずめ踊り

雀踊り(すずめおどり)

郷土舞踊の一種。編み笠をかぶり、竹に雀模様の着物を着、奴の姿で踊るもの。

(大辞林 第三版 より)

日本各地で特徴ある雀踊りがあり、歌舞伎の演目の中にも登場します。いわゆる盆踊りの一種と考えられるでしょう。この浮世絵のタコたちは、頭に編み笠ならぬ葉っぱを被り、器用に踊っていますね。

その5.相撲

四つに組む蛸たちの横には「取組」、右の葉っぱを持ったタコの横には「角力(相撲のこと)行司」とあります。相撲は、江戸の3大娯楽と言われる「相撲、歌舞伎、吉原遊郭」の中でも一番庶民的で人気がありました。

こうしてみると、歌舞伎や相撲がいかに庶民の生活に浸透しており、共通の楽しみであったかがわかり、非常に興味深いです。同時に、それをタコの擬人化で表現するという事は、当時の庶民にとって、タコも生活に根ざしたごく身近な存在であったことが伺えます。