有王丸＠歌川国芳

タイトル：有王丸 Ario-maru  主君俊寛の跡をしたうて鬼界ヶ島へ行道にて大蛸をきる
「Ario-maru on the shore,sword in hand,sturggling with a giant octopus.」

作者：歌川国芳　Utagawa Kuniyoshi（1797〜1861)

種類：武者絵　Warriors

時代：江戸時代、天保前期 （1833〜35)

サイズ：37.80㎝×26.40㎝

所蔵：大英博物館

歴史、物語背景

時は平安時代の治承元（1177)年。平清盛の権力時代。俊寛僧都（しゅんかんそうず）の別荘、京都東山鹿ケ谷荘にて、後白河法皇らによる平家打倒の陰謀が企てられます。これを源行綱(みなもとのゆきつな）が清盛に密告。首謀者として、俊寛、藤原成経（ふじわらのなりつね）、平康頼（たいらのやすより）が鬼界ヶ島へ流刑となります。

翌年、高倉天皇に嫁いでいた清盛の次女徳子が懐妊し、安産祈願のための恩赦として、成経と康頼は刑を解かれた一方、俊寛のみ1人島に置き去りに。帰らない俊寛を案じ、半年後に弟子であった有王（ありおう）が、俊寛を探しに鬼界ヶ島にやって来ます。

俊寛は、有王によって自身の妻と息子の死を知ります。また有王が携えた娘からの手紙は俊寛を案じ、有王と共に帰って欲しいとの内容。それを読んだ俊寛は「妻子にもう一度会いたいという想いも潰え、いつまでも娘に心配をかけるのも不憫だ」とし、自ら飲食を絶って念仏を唱えながら死去。享年37歳。治承3( 1179)年の事でした。

有王は嘆き悲しみながらも、俊寛の遺灰を持ち帰り、高野山に納めたといわれています。（埋葬場所は諸説あり）遺された俊寛の娘は、奈良法華寺の尼に。有王は法師となって全国行脚をしたそうです。

ちなみに俊寛に関する事項は概ね『平家物語』にて語られていますが、そこに有王に関する記載はなく実在の人物かは不明。後の時代に伝説として広められた説が有力です。

鬼界ヶ島とは

諸説あり。有力なのは当時の薩摩国、現在の鹿児島県の硫黄島、もしくは喜界島であったという説。硫黄島には、平家にまつわる数多くの伝説が残り俊寛像と俊寛堂が、また喜界島にも俊寛像と墓があります。長崎県の伊王島にも俊寛の墓があります。

有王丸とは

有王は上記の通り、実在の人物か不明。年齢不詳。俊寛の弟子で童子であったことから「丸」が付いています。墓は和歌山県かつらぎ町、三重県桑名市に存在。

浮世絵（武者絵）としての有王

俊寛を慕い、流刑地鬼界ヶ島に向かう有王丸を描いた浮世絵の作者は歌川国芳。かつての史実の主人公をモチーフに当世の暗喩を表現した作風で、いわゆる「武者絵」に該当。理不尽にも1人流刑を解かれない俊寛を助けるために海を渡る道中で出会う大蛸は、さながら平清盛、いや後白河法皇を表しているのでしょうか。俊寛の無念を晴らすために有王丸が巨大な敵に向かって奮闘しているように思えます。

原画は大英博物館所蔵。常設展示されてはおらず、過去2009年にロンドン、2010年にニューヨークで開催された企画展で展示されたとの記録があります。実物を見てみたいですね。

そしてその有王丸（＆大蛸）グッズを発見したので、いくつかご紹介します。見ているだけでも楽しいのでご参考までに。（リンク先の商品は2022年4月現在。在庫状況やリンク先の商品情報は変化しますので、ご購入される際のご質問等は各ショップにてご確認下さい）

◉Tシャツ