タコの鍔(つば)

タコグッズ、アート
発見日:2020年7月下旬頃

発見場所:オークションサイト内骨董店

素材:金属

サイズ:H約8.4㎝、W約7.3㎝、D約0,5㎝、重さ 約147g

鍔(つば)について

鍔(つば)は刀剣の柄と刀身の間に挟み、柄を握る手を防護する刀装具です。それ単体でも美術工芸品としての価値が高く、熱烈な愛好家も多数います。材質、デザイン等様々ありますが今回手に入れたのは、珍しいタコの絵柄。

タコの鍔(つば)について

二つのタコデザインのうち、まず右側を見てみましょう。

上下で二匹のタコが絡み合っています。柄の部分を囲んでうねうね這い回る蝕手の躍動感溢れる様は見事。また吸盤も一つ一つ刻んである丁寧ぶり。惚れ惚れします。

また、この鍔には「生涼軒 萩谷勝平」の銘が入っています。

調べてみると江戸後期、当時の常陸国水戸で活躍された有名な金工職人であったことがわかりました。

萩谷勝平(はぎや かつひら、1804年〜1886年)

世に水戸彫りと称される水府彫金(水戸金工)は、義公(光圀)の治世を踏襲した烈公(斉昭)の時代により隆盛をみ、海野美盛萩谷勝平という二人の名匠を出した。美盛は通称太三郎、号を起龍軒といい、勝平は通称彌介、号は生涼軒で、寺門家から出て萩谷家へ養子に入った。美盛は玉川美久を師とし、勝平は実家の兄の寺門勝房に学んだが、いずれも元は谷田部通寿から出た流派である。

(「水戸の金工」https://yugetsu.co.jp/traditional/pdf/mito.pdfより抜粋)

タコの鍔のもう一つ、左側を見てみましょう。

こちらは一匹のタコ。頭部(胴体部)分が大きく、触手で頭を掻いているような仕草に見えます。

こちらも吸盤の一つ一つが彫りこんであり、丁寧な仕事ぶり。ですが、銘はありません。有名な職人の作でないにしても、躍動感あふれる魅力的な逸品です。

この鍔の付いた刀を使用していた侍は、どんな人だったのでしょうか。タコ柄を好むなんざ、きっと洒落っ気のある、個性的な侍だったのでは、と想像が膨らみます。