「蛸水月鳥賊類図鑑」@栗本丹州

タコグッズ、アート

栗本丹州(くりもと たんしゅう)とは

1756年〜1834年。江戸中期から後期にかけて活躍した医者であり本草学者。当時、薬等に使用されることから有用な植物に関する資料はたくさんあった一方で、動物類、特に虫や魚に関する書物が少ない状況でした。そのため丹州は年月をかけてそれらの図譜を作成。科学的観察力に富み画力も優れていたため、本草学者の枠を超えて博物学者に近い存在であったようです。

「蛸水月烏賊類図鑑」(たこくらげいかるいずかん)とは

一般的な「魚」の範疇に入りきれない種別の海の生き物に関する図鑑。製作年は不明。判別できる範囲で、クラゲ10種、タコ3種、イカ4種、ヒトデ等5種掲載。どの絵も秀逸。

国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286924で、この巻物一巻、全て閲覧およびPDFでダウンロードできます。

そして、タコの部分がこちら。

絵の右横にタコの名前が書いてあります。

向かって右側のタコが「赤ダコ」。異名を「砂掴み」。左側のタコは「飯ダコ」。左側のイイダコはわかりますが、右側のタコは、砂という言葉にもあるように「スナダコ」のことではないかと推察されます。

こちらは「手長蛸」と書いてある通り「テナガダコ」のことですね。江戸時代、東京近郊にタコは身近に存在し、食されていたことがわかります。

それにしても、生き生きとした描写、美しい触手の曲線、細やかな色使いにより、タコも高貴な存在に見えます。対象生物の生態特徴を捉えた博物画としてだけでなく、絵そのものとしても魅力的な逸品です。

○参考、引用webサイト:国立研究開発法人 水産研究・教育機構、図書資料デジタルアーカイブhttp://nrifs.fra.affrc.go.jp/book/D_archives/A281_K11.html